楽しみにしていた舞台を観るために、
私なりの最上級のおしゃれをして、
着物を着て出かけました。
もちろん舞台は素晴らしかったのですが、
その日、舞台とは別のところで、
妙に目を奪われた人がいました。
エスカレーターに乗ったときのこと。
私のすぐ前に、
ひとりの女性が立っていました。
その方は着物ではなく、
普通にお洋服を着ていました。
後ろ姿を見ているうちに、
なぜだか目が離せなくなりました。
足があって、
その上に骨盤があって、
胴体があって、
首があって、
頭がある。
当たり前のことなのだけれど、
それらが無理なく積み上がっている。
胸を張っているわけでも、
「姿勢をよくしよう」としているようにも見えない。
なのに、とてもきれいでした。
エスカレーターで真後ろにいたのをいいことに、
失礼ながら、私はその方の全身をかなりガン見してしまいました。
何がこんなに気になるんだろう。
しばらく見ていて、
ふと思ったのです。
その身体の中に、その人自身がちゃんといる。
そんな感じがする。
身体の外側から、
自分の身体を操縦しているのではなくて、
その人の意識が、
すっぽり身体の中に収まっているような。
そして身体のほうも、
その人をちゃんと受け入れているような。
帰ってからも、
あの後ろ姿のことを考えていました。
姿勢がよかったから?
身体の軸が整っていたから?
もちろん、そういう見方もできると思います。
でも、私が惹かれたのは、
もう少し違うことだったような気がします。
身体が、その人の居場所になっている。
私はあの日、
そんな美しさを見たのかもしれません。
