せっかくの機会だから、
自分で選んだ着物を着て、
私なりの最上級のおしゃれをして。
見たかったものを観るために出かけました。
舞台の玉三郎さんは、
それはそれは静かで、美しかった。
以前、DVDで観ていた若い頃の玉三郎さんとは、
ずいぶん印象が違いました。
でも、今だからこその美しさがある。
見ることができて、
本当によかったと思いました。
七之助さんも美しかった。
松虫のお二人も、とても目を引きました。
そして、この日なぜか私の目が追っていたのが、
手。
玉三郎さんも、
七之助さんも、
若い松虫のお二人も。
手の動きが美しい。
指先まで意識が届いているようで、
それを見ていると、
心がしっとりするような気がしました。
そういえば私は、
仏像を見ても手に惹かれます。
そして、このブログのタイトルも
「手から癒やしを」。
どうやら私は、
自分で思っていた以上に
「手」というものに惹かれる人らしい。
そんな発見もありました。
そしてもう一つ、
この日の私にとって大切だったこと。
舞台を観ている途中、
ふいに悲しみが押し寄せてくる瞬間がありました。
以前の私だったら、
こんな気持ちを抱えているのに、
心から楽しむなんてできない。
そう思っていたかもしれません。
でも、違いました。
悲しみがあっても、
目の前の美しさに心を奪われる。
素晴らしい芸に感動する。
指先の美しさに、
心がしっとりする。
ああ、両方あっていいんだ。
悲しみがあるからといって、
美しいものを感じる心まで
なくなるわけではないのですね。
自分で着物を選んで、
納得のいくおしゃれをして、
見たかったものを見るために出かけたことも含めて、
今振り返ると、あの日の私は、
自分の人生を大切に扱っていたのかもしれません。
悲しみをなくしてからでなくても、
人生を味わうことはできる。
歌舞伎座でいただいた、
思いがけないギフトでした。
