ずっと、少し苦手な言葉がありました。
「そのままでいい」
優しい言葉だということは分かります。
「そのままで愛されている」
そんな言葉にも、救われる人がたくさんいるのだと思います。
でも私は、なぜか素直に受け取ることができませんでした。
「そのままでいいって、どういうこと?」
と思ってしまう。
だって私は、変わりたい。
もっとできるようになりたいこともあるし、知らないことを知るのも好きです。
できなかったことが、できるようになるのも嬉しい。
これまでの人生でも、人が努力することで変わっていく姿を、自分も含めて何度も見てきました。
だから、
「そのままでいい」
と言われると、
「じゃあ、変わろうとしなくていいの?」
という気持ちが出てくる。
反対に、
「もっと成長したい」
「ここは変わりたい」
と思うと、
「それって、今の自分ではダメだと思っているということ?」
となる。
私の中では、
「そのままでいい」と「変わりたい」が、思いきり矛盾していました。
どちらかが本当なら、どちらかがおかしい。
そんなふうに思っていたのかもしれません。
でも最近、
「どうして私は、この二つを矛盾だと思うんだろう?」
と考えていて、ふと気づきました。
私の中では長い間、
今のままでは足りない。
だから、変わる。
そのために、努力する。
という順番になっていたのだと思います。
今の自分と、なりたい自分の間に距離がある。
だから努力して、その距離を縮める。
もっとできるように。
もっとちゃんと。
もっと素敵に。
そうやって、自分を「前へ進める」ことが大切なのだと思ってきました。
この考え方の中に、
「そのままでいい」
を入れたら、確かに話が合いません。
そのままでいいなら、なぜ変わるの?
変わりたいなら、そのままではよくないということでしょう?
私には、そう聞こえていたのだと思います。
でも、「オセロの角」のことを考えていて、少し違う見方ができるようになりました。
今、目の前にある盤面。
白もある。
黒もある。
嬉しい私もいる。
寂しい私もいる。
好きなところもある。
変えたいところもある。
できることもある。
できないこともある。
この盤面全部が、今の私。
「そのままでいい」というのは、この盤面を今の配置のまま、ずっと固定しておくことではないのかもしれません。
次の石を置いていい。
変わりたければ、変わっていい。
やってみたいことがあれば、やってみていい。
上手になりたいなら、練習していい。
失敗したら、その失敗した私も、また盤面の中にいる。
盤面は、これからいくらでも変わっていく。
でも、どんな配置になっても、
今ここにいる自分を、盤面の外へ追い出さなくていい。
そう考えたら、初めて、
「そのままでいい」と「変わりたい」が、同じところに置けました。
私はずっと、
「今の自分に足りないものがあるから、変わる」
と思っていたみたいです。
でも、
今の私が、変わってみたいから変わる。
ということもある。
今の自分が嫌だからではなく、
「こっちへ行ってみたい」
「これをやってみたい」
「もう少し知りたい」
そんな気持ちから変わっていくこともできる。
それなら、
そのままの私で、変わっていけばいい。
ずっと矛盾していると思っていた二つの言葉が、やっと一緒にいられるようになりました。
「そのままでいい」は、
変わらなくていい、ということではなかった。
変わる前の私も、
変わろうとしている私も、
変わったあとの私も、
どれかを拒絶しなくていい。
そういうことなのかもしれません。
また一つ、
同じ盤面に置いておけるものが増えました。