”触れる””感じる”

つづきです。

手の準備が出来たら、

身体の端から、優しく触れてみます。

まず、手首に触れてみましょう。

手首を握って包み込むように。

触れた手首は、温かいでしょうか?

冷たいでしょうか?

手は敏感なセンサーです。

手に温度計をつけた気分で、温度を感じてみます。

次に、肘(骨の上)に触れてみましょう。

曲げた肘を下から包み込むように。

温かいですか?冷たいですか?

次に、肩の丸み(三角筋)に触れてみましょう。

ここは筋肉がしっかりあるので、肘よりは、温かく感じますね。

次に、下腹部に触れてみましょう。

ここは、身体の中心に近いので、

基本的には温かい部位ですが、あなたの下腹部はいかがでしょうか?

次に、おしりに触れてみましょう。

ここは、脂肪が厚いので、意外に冷たく感じることでしょう。

同じ身体でも、温度が違います。

身体を護るための素晴らしい身体のシステムです。

それぞれの、温度差を敏感に感じとりながら、

様々な場所を触れてみます。

触れて温度を感じることに慣れたら、

さらに、感じることを深めてみます。

話は少しそれますが、

おしゃべりするときに、

聞き上手がいると会話が弾みますよね?

聞き上手は、相手の目を見て、”あなたの話を聞きたい”と、

最大限の聞く姿勢をあなたに向けてくれます。

そして、絶妙なタイミングで相づちを入れてくれますよね。

その仕草や態度から、少しずつ心を開く環境が創られて、

おしゃべりも弾みます。

身体とのコミュニケーションでも、同じように聞き上手になることが大切です。

聞き上手な姿勢とは、

触れる手が、身体の真正面、

ちょうど下腹部の前あたりに来る姿勢です。

(出来ない事もありますので、出来る限り)

例えば、左手首に触れるとき、

左肘を曲げて手首が自分の真正面にくるようにして、右手で触れます。

左肘を曲げなければ、左手首に触れるために、

身体をねじって右手を左半身に移動させて触れることになります。

身体の真正面で対峙できると、聞く姿勢が自然と出来ます。

人の身体に触れるときも同じです。

出来る限り工夫をして、触れる手と触れる相手が、

自分の真正面に来るように身体を移動します。

相づちは、触れる力(圧)です。

例として、肘と手首の間の前腕を握るように触れてみます。

そして、握力を使って力を加えてみます。

あなたの力は、どの位でしょうか?

気持ちの良い圧力は、どの位でしょうか?

自分に、あるいは相手に問いかけてみます。

ちょっと強いよ→弱める。

ちょっと弱いよ→強める。

マッサージをしていたら、

そこそこ、もっと欲しいよ→元気に続ける。

そう、そこそこ!→そこをその人のツボと知る

もういいよ→止める。

この問いかけと相づちが上手くいくと、

コミュニケーションが上手くいきます。

日々変化するのが人間です。

同じ人でも、時によって変化していますから、

コミュニケーションは毎度、新鮮にはじめます。

もう分かっているから~というわけには、行かないのです。

聞き上手になってきたら、

今度は少し、話しかけてみます。

手で元気度を感じてみます。

皮膚の張り

筋肉の張り

むくみの様子 

身体はいろんな情報を与えてくれています。

この、会話が弾んだ関係が、とても重要です。

身体と繋がるイメージです。

患者様を相手にするプロにとっては、

この会話の弾んだ関係づくりはさらに重要です。

日々の臨床現場では、

上手く行くときもあれば、

当然上手くいかないことも数多くあります。

上手くいかない時って、

万人に当てはまる特効穴を求めたり、

百発百中!のような簡便で効率の良い手法を求めたり、

とかく、よそ見をしがちなものです。

でも、ハッキリと言えます。

簡便で効率の良い特効穴はありません。

そして、ここで言う”感じる”ことを深めて、

身体と会話ができる事、

すべては、ここから始まります。

そこから、

更に深めて”感じる”ために、

”知る”ことです。

”知る”ために、

先人が残してくれた解剖学の知識を学ぶことで、

手の下にある身体からの声が聞こえてくるようになる、そんなイメージです。

感じるために、学ぶことです。

つづきます