昔の話 ③大学附属総合病院整形外科研修

昔の話です。

今までの流れ

昔の話 ①某有名経絡治療大家へ弟子入り

昔の話 ②研修生時代

 

研修時代に、

大学附属総合病院の整形外科医局で、

研修させて頂く機会を得ました。

 

週一回、教授の外来に付いて、

その診療を実際に見せて頂いたり、

医局の勉強会に参加しました。

 

慣れてくると、

鍼治療も担当しました。

 

教授は、脊椎のご専門で、

中でも、頸椎の手術に関するご研究を、

熱心に推し進め、功績を挙げておられる先生でした。

Dr. Manuel González ReyesによるPixabayからの画像

 

外来のご担当は、午前中だけのはずなのに、

いつも午後四時過ぎまで、

昼食抜きで診療をなさっていました。

 

様々な患者様を、

教授の横で拝見しました。

中でも、「頸椎症性脊髄症」の方が多く、

手術適応になる方がほとんどでした。

 

鍼灸の臨床現場では、まず見ることのない、

病的反射の陽性例や

←バビンスキー反射でおこる、

足趾の開扇現象も、

 

腱反射の亢進例

←膝蓋腱を軽く叩打しただけで、

下腿が”蹴り”のように飛んでくる程の亢進状態を、

直に見ました。

 

MRIやレントゲン写真を確認し、

診断基準をチェックして、

診察を進めて、手術日程を組んで、

手術を行い、術後の経過を確認する。

臨床症例を検討して、

経験を積み重ねて、

更に良い治療法を研究する。

 

医師の先生方の努力とご苦労を、

近くで見ました。

 

脊髄症で手術を受けて、

命に関わる問題や、麻痺は解消できても、

手術前の段階で神経の変性が進んでしまうと、

筋肉の回復が思わしくない症例もあります。

 

なかでも、どうしても手術侵襲を受ける、

僧帽筋に問題を残す症例が多かったことを記憶しています。

回復を求めて、そういった症例に、鍼治療をしました。

 

しかし、

そんな僧帽筋は、筋パルスを行っても、

動かすことが難しく、

効果を出せませんでした。

 

その他、

脳性麻痺で頸椎環軸関節の手術後の方、

梨状筋症候群の方、

腰椎椎間板ヘルニア、などなど、

様々な患者様に、

外来や、入院病棟で、鍼治療をしました。

週一回、午後だけで7〜8人、

治療させて頂きました。

 

一年ちょっとの短い期間でしたが、

教授と医局の先生方が、

鍼灸師である私に、

伝えて下さったことがあります。

 

鍼治療が、JOA scoreを明らかに改善する効果を示さなければ、

我々の中では認められないだろう。

 

日本整形外科学会の治療成績判定基準を、

JOA scoreと言います。

これは、手術が適応になるような、

重症例の治療成績も反映するように、

作成されているものです。

 

実際、整形外科の先生方は、

JOA scoreを基準とした患者様への貢献を、

日々目指しているわけです。

 

これに、鍼治療の成績を反映させるのは、

とても、難しいことでした。

 

 

でも、

同じ土俵に乗らなければ、

評価は出来ないと言うことです。

 

整形外科の先生方の厳しい視点を感じたものでした。

 

 

(☆開業の整形外科の先生方は、

違う視点をお持ちです。

この件は、またつづきで。)

 

 

ブロック注射が効く症例には、

鍼の有用性を感じる。

 

例えば、前出の梨状筋症候群は、

鍼治療で効果を上げることが出来ました。

その患者様は、鍼治療前に、

教授に、ブロック注射を受けていました。

効果はあるのですが、

長続きしないため、

何度も同じ場所に、

ブロック注射をしなければならない状況でした。

でも、ブロック注射は、

薬液を注入する注射針なので、

当然太い針になります。

同じ場所に続けて打ってしまうと、

どうしても皮膚の瘢痕化が起こります。

鍼治療の鍼ならば、細いので、

まず、瘢痕化は起こらないから、

鍼治療の可能性を感じると。

 

ブロック注射は、鎮痛を目的に、

様々な部位に行われます。

 

部位や刺入場所や深度に

こだわることが出来るのは、

まさしく鍼治療の醍醐味です。

 

注射の刺入では、押手を使うことが出来ません。

刺入場所のあたりを付けたら、

視線で定め続けながら、

皮膚の消毒をして、

刺入するしかありません。

 

押手を手助けに、

刺入が出来る鍼治療は、

鎮痛を志す人々の、

ある意味、憧れの手法とも言えます。

 

 

電気刺激を、

筋肉に正確に行う筋パルスにも、

驚かれました。

 

過去記事にも書いてます!

鍼灸師の醍醐味‼️

 

局所に正確に刺入するテクニックを磨いて、

ブロック注射やトリガーポイントの視点を、

鍼に取り入れることは、

鍼の可能性を広げて、

効果を最大限に上げる為に、

必須だ!と思います。

 

 

 

 

本当に貴重な経験をさせて頂きました。

 

 

 

 

 

それにしても・・・

 

 

お医者さんは、

並みの体力じゃ、出来ないな!

と、心の底から思いました。

 

医局の先生方は、

朝7時から、医局で勉強会をして、

(その勉強会では、

筋電図の最新本を、

読み合わせることをしていました。)

9時から午後4時過ぎまで外来診療して、

病棟を回診して、

夜は、薬や医療器具のメーカーさんの勉強会があり、

そこから、研究や論文の作成やチェックをしておられました。

 

医局の若手の先生が、

夜中にやっと書き上げた論文を、

教授宅にファックスで提出して、

とりあえず安堵して仮眠しようとしていると、

教授が直しを入れて、

すぐにファックスで送り返してこられると言うのです。

「教授は、いつ寝ているのか?」と、

皆さん、不思議がっていました。

 

 

医療界の発展は、強くて優しい鉄人の方々に、

牽引されているのですね。

 

 

心から、敬意を表します。

 

研修時代の話、続きます。